つながりを求めて

2019年3月12日(日)「子ども・若者の貧困を考えるシンポジウム」が、宮崎県福祉総合センター本館で行われました。
子どもの貧困を考えるシンポジウム ポスター表紙子どもの貧困を考えるシンポジウム ポスター裏

これは一般社団法人みやざき公共協働研究会のWAM助成事業の報告会を兼ねたものです。参加者は75名(一般58名、講師、パネリスト、スタッフ17名)でした。
シンポジウム案内パネルシンポジウムの様子

以下、その概要です。

講演:
「ソーシャルワークから見た子ども若者の貧困と支援のあり方」
若宮邦彦氏(南九州大学人間発達学部・准教授)

講演趣旨:
人権と社会正義がソーシャルワークの拠り所である。高齢者や障がい者などを一人の生活者としてとらえることが求められる。

人は多様な才能、能力、スキル、願望などを持っており、苦境の中にあっても課題に立ち向かう力を持っている。その強さや回復力を信じて支援していくことが大事である。

社会問題の根底には人々の孤立がある。公的福祉サービスだけでは対応できない課題も浮き彫りになってきている。行政はもちろん民生委員や福祉協力員、住民ボランティアも含め、地域住民の見守りと連携の強化が必要である。

プライバシー保護から個人情報保護法が持ち出されるが、情報を守って命を守れないのでは意味がない。今、求められるのはシームレスケア(継ぎ目のないケア)である。地域における生活者という視点で縦断的かつ横断的な支援体制が望まれる。いわば風呂敷的支援である。

善意の搾取ということで、ボランティア精神を父権主義や自己満足、偽善、ビジネスなどと結び付ける傾向がある。その側面があることも注意しなければならない。

普遍的価値を持続可能なものにしていくためには科学的な根拠に基づく社会福祉実践を通して制度・政策へつなげていかなければならない。貧困問題は、自己責任、努力不足に原因を求める安易な当事者・保護者批判を生みやすい。社会の仕組みを問い、保護者・若者の権利を保障する営みに持っていく必要がある。

子どもの貧困は多様なニーズが絡んでおり、さまざまな専門機関と、地域の人々が連携協力し、社会的包摂としてネットワークを構築していく必要がある。全世代・全対象とする地域包括支援に結び付ける時期にきている。

子どもの権利条約の生きる権利、守られる権利、育つ権利(教育を受ける権利、自分らしく育つ権利)、参加する権利を確認して話を終えた。

講演の様子

井戸端会議(シンポジウム)
「つながりを求めて」
店子(パネリスト)嶋田喜代子氏(宮崎市議会議員)、山元絵美氏(スクールソーシャルワーカー)、富井真紀氏(宮崎子ども商店、プレミアム親子食堂代表)、大家(コーディネーター)亀澤克憲 (NPO法人みやざき教育支援協議会代表)

井戸端会議趣旨
第1部「こんなことがあったよ!」では、プレミアム親子食堂、宮崎こども商店の取り組み、児童養護施設での学習支援、スクールソーシャルワークで出会った子どもの実態等の体験談を話してもらう。

物資支援で家庭での親子関係が改善した事例や中学生の女の子が兄弟姉妹の面倒で疲弊している事例、どこにも悩みを打ち明けられない子ども多くいることなどが出される。
貧困の実態が見えない学習意欲がないなかで待機型の取り組みには限界がある。アウトリーチや他と連携することで支援に結びつくケースが出てきた。

井戸端会議の様子

第2部「つながりたいね!」では、取り組む前の実態調査の必要性、データをもとに活動すべきとの意見が出される。宮崎市では次年度より実態調査が予算化された。

地元に密着している民生児童員などが最も状況を把握している場合もある。行政も情報公開しなければ意味がない。学校も同じ。行政、学校批判からは何も生まれない。それぞれの役割を理解し、情報共有してつながることが大事。例えば、学校行事に民生委員を招待し顔なじみになる、教育委員会の後援をとってチラシを学校で配布してもらうなど。
高齢者から児童まで地域で誰でも来られる居場所作りが必要ではないか。

その意味から地域包括センターの対象と役割が広がりつつある、市民からの要求で議会や行政が動く、参画することが大事、などの意見が出された。

当日参加も含め定員を大きくオーバーし、県内各地からたくさんの方々が参加されました。学生からシニア世代まで幅広い年齢層が集まり、「子どもの貧困問題」に対する関心の高さがうかがわれました。

井戸端会議の様子

会場も適当な広さで、窓外には交通公園の樹木も望まれ、落ち着いた雰囲気で会は進められました。
講演はプレゼンを通して福祉やソーシャルワークについてわかりやすく説明され、教育的視点とはまた違った知見が深まりました。

井戸端会議では椅子を車座にして話しやすい雰囲気を作りました。限られた時間ではありましたが行政、民間、支援者など多くの方が意見を述べられ、交流の場ができたのではないでしょうか。

みなさま、お疲れ様でした。ご参加の方々と