フリースクールを求めて

フリースクールを求めて ポスター
教育座談会「フリースクールを求めて」ポスター(PDF)

2017年5月28日(日)総会後に「教育座談会」を行いました。学習支援を行うなかで引きこもりや不登校の中高生や若者が増えていることから、「みやざき不登校ゼミ」を主宰している日高拓一氏に問題提起をお願いしました。

以下、話の概要です。

1. フリースクールとは何か
シュタイナー型、サマーヒル型は1920年代英国のサマーヒル・スクールで始まった。時間割があるが、学園の運営は子供たち自身で行っているのが特徴。サドベリー型は1960年代米国のサドベリー・バレー・スクールが始まり。時間割はない、子供たちの興味や関心をありのままに行う。日本でのフリースクールの始まりはわずか30年ほどの話。全国に広まったのは平成に入ってから。

昭和60年東京シューレ(日本初にして日本最大のフリースクール)。東京シューレはサマーヒル・スクールのやり方を日本の国情に合わせてアレンジしたもので、本来は新しい学校の在り方として西洋で研究されていた。

日本でフリースクールが不登校の子供の行くところと思われるようになった理由は、1980年代の日本、不登校の子供の急増 いじめ、校内暴力、管理教育がある。不登校になったら力づくで学校に戻すという学校の方針。戸塚ヨットスクールや風の子学園、アイメンタルスクールといった支援を謳う施設が虐待まがいの行き過ぎた指導を行い、人身被害を起こしたことから、東京シューレは子供の人権や権利擁護を重視するようになった。

東京シューレのスタンスに賛同したフリースクールや親の会によって結成されたのが、フリースクール部門『フリースクール全国ネットワーク』(結成:平成13年)。

宮崎県では加盟スクールはない。九州では5件(福岡、熊本、長崎各1件 佐賀2件)。親の会『登校拒否を考える親の会』(結成:昭和59年)。

フリースクールの最近のトレンドはサドベリー型。八ヶ岳サドベリー(山梨県)、まっくろくろすけ、西宮サドベリー(兵庫県)、宮崎県では『にじのりずむ』(高鍋町)、そのほか延岡市、日南市で動きがある。

フリースクールは玉石混合、悪徳なところもあるので注意が必要!

2. フリースクール業界について
経営的な問題・・・
正直言って、食べてはいけない業界。それなりにコストはかかっていても、道義上高額なお金をいただけないジレンマ。不安をあおってお金を吊り上げるのはできないわけではない。

人的な問題・・・
実際の運営はボランティア頼み。常勤も最低限程度の生活費程度しか出せない。ボランティアスタッフの熱意に依存している、究極のブラック。

経営的な問題・・・
収入は月謝収入+入会金(月3万円~5万円が相場)、寄付金や補助金は欠かせない。大掛かりな計画は補助金頼み。クラウドファウンディングは使いよう。

事務的な問題・・・
利用者の学籍問題(原籍校になる?)。
定期券問題。車社会の宮崎では親が自家用車で送迎すればいいかと思われがちであるが、都市部では切実な問題。実習定期という形で定期券を発給してもらう形が多いが、原籍校の校長の裁量次第。発行を拒む校長や自治体も存在する。社局(JR、私鉄、バス会社等)毎でのルールはないらしい。

3. なぜ宮崎ではフリースクールは根付かなかったのか
行政の力が強い。民間人の力が弱すぎる。
民間人の所得が少ないため、お金のハードルが高い。
県民の無理解、無関心。コミュニティの濃密さ。
地理的な要因(宮崎は長距離交通機関のインフラが劣悪すぎる)。人の往来が少ないため、情報が入ってこない。東九州自動車道、九州新幹線、ソラシドエアでどこまで改善できるか。サーフィン移民、出戻ってきた宮崎県人、災害の長期避難者に期待。

教育座談会の様子

4. 多様な学びの保障法
昨年(平成28年)国会で可決、本年2月に施行。学校復帰一辺倒だった教育行政がはじめて方針転換をおこなった。日本は法律で決めないと動かない、しかし行政に介入されるのが嫌だというジレンマ。一部のフリースクールは自分たちの声が国を動かしたと喜んでいるが、実際は複雑な気持ちで考えて居る人が多いように感じられる。

5. フリースクールを見て
フリースクールの先進地帯は大阪。大阪は標準的な規模のフリースクールが市内各所に点在している。フリースクール同士の連携や交流が盛んで、共存共栄ができている。

登校拒否を考える夏の全国合宿は、毎年夏休みのシーズンに全国各所で行われているフリースクールのイベント。支援者、親向けの講演会、分科会と子供向けのゲームや屋外プログラムが用意されている。このイベントで全国各地のフリースクール関係者と知り合うことができた。このイベントを宮崎でも誘致できないか? 実現したら宮崎の子供にとって大きなプラスになる。

6. もしも自分がフリースクールを作るなら
公民館の一室を惜りてでもいいから、当事者が安心して過ごせるような場所を作りたい。自宅から出てこれないことが一番の問題。

事業化を行うのならば、たくさんの方々の協力は欠かせない。誰に相談したらいいのか。資金の確保、スタッフ募集や営業面など、越えなくてはいけない課題がたくさんある。一人では何もできない、協力していただきたい。設立する際、フリースクール全国ネットワークに加盟したい。全国の優れたノウハウを宮崎に持ち込みたいし、逆に宮崎発のノウハウを伝えたい。

教育座談会の様子

座談会では、フリースクールが求められる背景や宮崎だけの宅習問題、選択のなさ、カリキュラム(ゲームは必要)、全国合宿での魅力(個性的な人たちに刺激を受ける)、今の若者の職業観(YouTuber)、学校不信や教科書検定問題などが話題になりました。

日高氏は、フリースクールを「誰にも負けないスキルと生きる楽しさ」を培う場にしたいということでした。

参考
フリースクール全国ネットワーク http://freeschoolnetwork.jp
フリースクールみなも http://fs-minamo.c.ooco.jp
多様な学習機会の保障法を実現する会 http://aejapan.org/wp/
ふりーすくーりんぐ(大阪) http://freeschoolring.yukihotaru.com
フリースクールここ http://npokoko.org